小幡績氏による「向こう2年(2015年まで)の間に日本国債の価格は必ず下がる」(2013/7/22)

アベノミクス予想の検証 第一回

慶應義塾大学 ビジネススクール准教授 小幡績氏は、
2013年7月22日の異次元緩和は、なぜ誤りなのかと題した記事にて

「異次元緩和に成功しても失敗しても金利は必ず上がる。金利上昇は国債価格の下落を意味するので、向こう2年の間に日本国債の価格は必ず下がるのだ。」

http://president.jp/articles/-/10039:異次元緩和は、なぜ誤りなのか

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結果は金利は一貫して低下しています。
予想大外れとなりました。

黒田総裁による上方バイアスによってまだデフレ脱却できていない

ダボス会議で黒田総裁のコメントを目にした。
ニャントロ大魔神 on Twitter: "コラムのネタにするんですね、分かります。見事に黒田総裁の回答は役人答弁で、会場中異様な空気になってしまいました。
https://t.co/89Ycnowfaf

動画です。
https://t.co/FRwEnIlQTr"

黒田総裁は

御存知の通りCPIの数値は、実際の物価上昇率から過大評価される傾向があり、CPI1%の物価上昇は実質0%と思われる。

ニャントロ大魔神 on Twitter: "黒田総裁「2%のインフレターゲットは今でも適切な基準である。御存知の通りCPIの数値は、実際の物価上昇率から過大評価される傾向があり、CPI1%の物価上昇は実質0%と思われる。また景気循環の際、金融緩和を行う際は適切なインフレターゲットが必要になる。(続く"


いわゆる上方バイアスの話であり、1%程度想定しているということになる。

日銀の目標とするコアCPIは17年12月前年同月比+0.9%

総合+1.3%、コアコアCPIは0.3%という結果になった

つまり0.9%−1%は0.1%であり、いまだ物価上昇率はマイナスでデフレ脱却とは程遠いという状況になり、
黒田総裁は「物価上昇率は依然としてマイナスでありデフレ脱却はできていない」
と言うことをいっているに等しい

需給ギャップを高めよ・補足

私がリフレ政策に目覚めた理由は、当時の高橋洋一氏の「この金融政策が日本経済を救う」を読んででした。

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)

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図(数字)が違う?内閣府のGDPギャップとインフレ率を回帰するとGDPギャップ+2%でインフレ率2%。また失業率を回帰させるとGDPギャップ+2%で失業率2%台半ば。GDPギャップ+2%でインフレ目標、構造失業率が達成可能

高橋洋一(嘉悦大) on Twitter: "図(数字)が違う?内閣府のGDPギャップとインフレ率を回帰するとGDPギャップ+2%でインフレ率2%。また失業率を回帰させるとGDPギャップ+2%で失業率2%台半ば。GDPギャップ+2%でインフレ目標、構造失業率が達成可能… "

高橋氏は、需給ギャップが半年後にインフレ率を影響を与えるとして、ラグをおいています。
[http://diamond.jp/articles/-/138218?page=2:安倍改造内閣が問われる「20兆円財政出動」で物価目標2%達成
]
その結果、

GDPギャップとインフレ率の関係から、「2%インフレ」にするために必要なGDPギャップ水準を算出してみると、+4.5%程度である。
 それを埋め合わせるためには、有効需要25兆円程度が必要になる。1単位の財政出動による需要創出効果を示す財政乗数が、内閣府のいう1.2程度としても、この有効需要を作るための財政出動は20兆円程度である。

4.5%の水準としており、どのように需給ギャップを高めるかは、財政か金融かという政策は様々あります。
結論としては、高橋氏のおっしゃるとおり需給ギャップを高めることは必要です。


なお私の図はラグを置いていません。
また、手元に消費増税の影響を考慮したインフレ率がないために、多少数字が粗くなっているのはご容赦ください。
そのために相関も弱くなっています。

85-17

2%を達成するためには、Y=2,X=2.95


01-17

2%を達成するためには、Y=2,X=6.49

GDPギャップで+3-6%程度が必要としました。

リフレを、取り戻す。 -需給ギャップを高めよ-


久しぶりに高橋洋一氏の「安倍首相はなぜ「リフレ派」になったのか」、
安倍首相はなぜ「リフレ派」になったのか | 高橋洋一の俗論を撃つ! | ダイヤモンド・オンライン

また、上念司氏の「アベさんがアベノミクスにたどり着くまで」
[https://www.mainichi.co.jp/heisei-history/interview/19.html:上念司さんの「アベさんがアベノミクスにたどり着くまで」
]

を読んで個人的に当時を思い出して、経世済民を思いだしました。


「リフレを、取り戻す。」
約5年経ちましたが、コアCPIは0.9%、以前であれば
CPIの上方バイアス考慮すれば実質デフレだ!という罵られる状況でしたが、
黒かった人がエスブリッシュされて白くなったのか、そうした声はリフレ派界隈から聞いていません。
デフレ派の人たちはAll deadしたようですが。。。

また、日銀の政策決定会合ではリフレ派の片岡剛士氏が金融緩和を訴える一方で、
かつてリフレ派の重鎮と言われた方々(岩田規久男副総裁、原田泰氏は黙殺しています)


アベノミクスの成果については疑いの余地はありませんが、デフレ脱却とは言えません。


http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2013/0124/shiryo_02.pdf


日本銀行が作成した図にオレンジの色の線をいれると物価上昇率2%(左軸)に達するには、
需給ギャップが6%程度(右軸)に高まらないとインフレ率は達成できていません。

つまり、需給ギャップを高める政策が必要です。(藤井某のように公共事業を行なえと主張するわけではない)


これを直近まで拡張すると

4−6%のプラスの需給ギャップが依然として必要と推測される。
(若干高めに感じるのは、ヒストリカルデータを元に算出した潜在成長率が低い為)

これを金融政策で埋めるのが日銀の仕事ではないだろうか

実質金利の推移

期待インフレ率の概念が理解出来ないために、流動性の罠で金融政策は限界だ、無効だという人が多いので、実質金利の推移を計算する。


名目利子率=実質金利+期待インフレ率というフィッシャー方程式というものがある。
このフィッシャー方程式と期待インフレ率を近似するBEIとコールレートから実質金利を出してみる。
期待インフレ率とは、市場が予想する将来のインフレ率である。
潜在成長率は日銀の展望レポートから引用する。
また、潜在成長率=均衡実質金利=自然利子率である。



リーマンショック以降は、実質金利>自然利子率の状態が続いている。
直近になって、BEIが0%近辺まで上昇したものの、また下落傾向でありマーケットはデフレ予想である。


そのため、実質金利が下がりようやく自然利子率>実質金利と逆転しつつあったものの逆戻りしてしまった。


金融政策で期待インフレ率を上昇させ、実質金利<自然利子率とならなければ、デフレ脱却、デフレギャップの解消とはならない。

日本の政府債務と財政政策の持続可能性

土居丈朗氏と星岳雄氏と沖本竜義氏のNBER論文を読んだ。


というのも、そのうち土居氏が経済教室やそのエコノミクストレンドに載せたり、増税の大好きな日経の経済論壇が好きそうなネタなので先に書いておこうと思う。


論文の結論は、

If the government fails to reduce the primary deficit by increasing the taxes and
reducing the expenditures and transfer payments, Japan would be forced to reduce the value of government debt through either inflation or outright default.

とまあ増税を煽る結論となっているのだが、そもそも前提がひどい。


まず、先日から何度も言っているように年金積立金が債務計上しているのはおかしい。
これを決めたのは財政審のメンバーである土居氏であり、純債務でも世界一なんだというのはある意味で自作自演である。


ちなみに本文でも

the social security funds (reserves for government-run pension systems) had the net financial assets of about 200 trillion yen (about 40% of GDP).

と触れている。


さらに、成長の仮定としてBroda and Weinstein (2005) を引用し、低成長を想定した上で、

if the government expenditure is to grow at the rate of GDP,

と土居氏らは、民主党の中期財政フレームの達成は実現不可能とみているようだ。



また、社会保障の分析ではさらなる社会保障の充実をする負担の重いシナリオを選択し、暗に増税の必要性をより迫らせている。
名目GDP成長率も2%、インフレ率1%とかなり低いものになっている。



ここまでで既にかなりひどい想定シナリオだが、これにとどらまらない。

For example, if we assume the interest rate is higher than the growth rate by 2%

金利が成長率を2%を上回るという、ひどい想定である。
金利が4%で、成長率が2%ならもちろんドーマー条件は満たさない。



こうしたかなり最悪のケースの想定シナリオをもって

Thus, our calculation suggests that the government increase the revenues by more than 11 percent of GDP through tax increases and increases in social security contributions by taxpayers.

GDP比で11%増の国民負担を必要としているわけであるが、そもそもデフレ下でリーマンショックから回復もせずデフレギャップが約20兆円もある2010年を基準としている。


最後に経済学的におかしなところは

Noting that the total financial assets of the household sector currently amount to about 300 percent of GDP, the government may face substantial trouble refinancing the debt somewhere along this path.

家計の金融資産を政府債務が上回ると財政危機になるそうだが、なぜなるのかよくわからない。
海外は日本国債を買わないほど、今の日本国債はミスプライシングされているのだろうか?



まあ、細かいところを挙げればきりがないのだが、かなり最悪の想定シナリオでは増税が必要といった結果にそうである。
では、こうした最悪の想定シナリオにならないようにマクロ経済政策を運営すれば増税は必要ないだろう。

日銀レビューの信頼性『わが国の消費者物価指数の計測誤差: いわゆる上方バイアスの現状』より

12日に総務省からCPI改定が発表され0.5−0.8ポイントの下方修正となった。


多くの識者がこの上方バイアスを予想し、デフレはさらに深刻ではないかと訴えているが、日本銀行の中長期的の物価安定の理解では1%と上方バイアスを考慮すればわずかインフレ目標となっていた。
また2006年には0%になっただけで量的緩和解除したが、後日の改定で当時はデフレだった事が判明した。


では、日銀が上方バイアスを無視し続ける理由はなんだろうか
白川総裁も講演でよく引用する日銀レビューでは上方バイアスについての論文がある。


結論を見てみよう

おわりに
本レビューでは、わが国CPIの計測誤差の源泉とその現状について検討した。CPIは、2000年基
準改定において、指数精度の改善に向けて意欲的な対応がなされた結果、上方バイアスも縮小している。このため、上方バイアスの存在自体は、物価情勢の判断にさほど大きな影響を与えるものではなくなってきていると考えられる。

現実はどうであっただろうか?
日銀レビューと日本銀行職員の程度はこんなものである。


上方バイアスの民間予想があったにも関わらず、日銀は日銀レビューを根拠に上方バイアスはないとし、総務省のCPI改定後にそれを受けて一層の金融緩和がなされたら、
『too little, too late』の証拠である。