徳川吉宗のリフレ政策

日経ヴェリタスの2010年7月18日号に「デフレ・税収減…江戸も悩んだ 現代に通じる財政再建のヒントを探る」という記事がある。

まず日本史をおさらいする。
・8大将軍吉宗は1716年から「享保の改革」を行う。


・改革以前の幕府は米価が値下がりして年貢高が減り続けたが、幕府の経費や家臣への俸禄を減らせなかった。
⇒行政のスリム化、無駄削減、歳出削減、公務員給与カットが進まない現代の日本と同じ


・吉宗の改革は一般に倹約、増税、新田開発
⇒現代なら新田開発は税収増を狙った成長戦略


・吉宗の施策は当初は厳しい倹約を強いた。その結果、商いは停滞し、物価はじりじり下がった。
⇒消費税増税や緊縮財政の結果、マイナス成長となった橋本政権、マイルドなデフレが16年間続く現代と同じである。


・新田開発で米の生産増。その結果、米を売って生活していた武士の生活が困窮
⇒生産性が向上してもデフレが続く限り問題は解決しない。小泉政権では実質で平均2%成長したがデフレで名目でわずか平均1%の成長率


・1736年、貨幣を改鋳して「元文小判」に。小判1枚=8.6g(含有率66%)それまでの6割に。旧小判100両と新小判165量交換にして65%の割増。(165×0.6=99)旧小判では額面どおりの物しか買えないとして購買力の点では新小判に交換したほうがはるかに有利。旧小判との交換はスムーズに進み元文小判は瞬く間に江戸や各地に広まった。
⇒大変見事である。13年間で約88%物価が上昇している(62/33)。年率で簡単に直すと約5%の物価上昇率である。それまではデフレであったことを考えると適性であり、またブランシャール論文で4%のインフレ率を提言していることも考えるとケインズより200年、ブランシャールより約280年先取っている。
インフレ期待を形成している。そしてクルーグマンのベビーシッターモデルの先取りともとれる。
金の量を99とするとゲゼルのスタンプのように1%のマイナス金利による新券切り替えと考えることもできるのではないだろうか。

・米価は上昇、1730年に米一石の価格は銀33匁から43年には62匁に回復。流通量の調整もあり米価は安定。直轄領から上がる年貢高は1割増で160万石に。五公五民へ年貢率引き上げで農民負担は増えたが財政赤字は解消され財政は建てなおされた。
⇒成功の秘訣は財政政策と金融政策を組み合わせた「ポリシーミックス」であると記事では結論づけている。
現政権と日銀にも大変当てはまることである。増税先行、緊縮財政先行では財政再建が進まないことはアレシナ教授の研究からでも明らかである。そして成長戦略は重要だが、デフレを脱却して名目成長をしないと税収が増えない。



日本国第94代内閣総理大臣菅直人日本銀行第30代総裁白川方明が学ぶべきは、江戸幕府第8代将軍徳川吉宗ではないだろうか。
側用人神野直彦小野善康を罷免したらどうか。そして吉宗の足高の制に学び、公務制度改革を推し進めてはいかがか。