岩本康志氏による「日本銀行のトリレンマ」

岩本氏はtwiiterにて

(デフォルトは起こらないとして)国債は満期まで保有すれば,リスクはない。中途売却すると,そのときの市場価格によるリスクがある。これは,重要なポイント。
長めの国債を大量に買うと,ゼロ金利を解除するときに中央銀行のバランスシートが毀損する,というのが,かつての金融政策論争で日銀エコノミストから出された論点。ただし,かつての量的緩和論者,現在のリフレ派との対話はあまり深まっていない。
長めの国債を大量に買う,バランスシートにリスクをもたない,機動的に金融政策をする(インフレを制御する),の3つは同時に成立しない。どれか1つをあきらめる必要がある。
「インフレを制御しようとすればバランスシートが毀損するし,毀損を避けようとすればインフレを制御できない」とのトレードオフで整理したのに「あるときはインフレを制御できると言い,あるときは制御できないと言って,矛盾している」と返されたら,対話にならない。

http://twitter.com/#!/iwmtyss/status/29880488118198273
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改めて整理すると
日本銀行は以下のトリレンマに直面することになる。
1,長めの国債を大量に買う
2,バランスシートにリスクをもたない
3,機動的に金融政策をする(インフレを制御する)

以上の3つのうち2つしか選択できない。

捨てるオプションとして
日銀エコノミストは、1の長めの国債を大量に買う
リフレ政策を主張する人は、2のバランスシートにリスクをもたない
クルーグマンは、3の機動的に金融政策をする(インフレを制御する)
ということになる。


つまり、日銀による財政政策だ!それは財政法違反だと各所で批判する岩本康志氏は、1のオプションを捨てるということを意味している。
物価の安定よりも日銀のバランスシートが毀損する恐れの方を優先しろということである。

それではなんのための中央銀行がわからない。
物価の安定よりも将来のバランスシートの健全性の方が大事だというのはかなり暴論であろう。


デフレによって、日本経済が停滞し、日本国民が疲弊してしまっては
『国破れて日銀あり』という状況になってしまうのである。


本日は、奇しくも日本銀行のゼロ金利解除の議事録が公開され、歴史的に見れば中原伸之氏の認識が正しかったことが証明され、また日本国債の格付けが下がった日でもある。


中原伸之先生の著書のタイトルは、『日銀はだれのものか』である。



以下は想定問答として参考程度に掲載する
【誤解のないように追記:この想定問答は私の文章で以上の本の内容ではありません】


Q日銀による財政政策は財政法4条、及び5条に違反しないのか

Aこのような場合のために日銀法43条があります。今回も新型基金は43条に基づいていますし、過去にも例があります。
第43条  日本銀行は、この法律の規定により日本銀行の業務とされた業務以外の業務を行ってはならない。ただし、この法律に規定する日本銀行の目的達成上必要がある場合において、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない。


Q日銀の出口戦略では必ず損を出すのか?

A必ず損失を出すとは限りません、日銀は物価連動債の購入や、バランスシートを縮小する時にも必ずしも国債を得る必要はなく、保有する資産である金や外貨を売れば逆に利益が出ることも考えられます。


Qバランスシートが毀損すると何が起こるのか?

A岩本先生に聞いてみてもお答えがありません。過去には似た様な例としてサマーズと日銀幹部の間で、
日銀幹部が「それでは日銀のバランスシートが毀損する」
サマーズ「So what?(だから?)」と聞いたら日銀幹部は答えられなかったそうです。


Q政府保証はつければ問題ないのではないか?

A既に日本銀行は非伝統的金融政策を始めるにあたって内部留保を従来の5%から15%へ引き上げています。