2002年の財務省の日本国債格付けの反論

平成14年4月30日に当時の黒田財務官は格付け会社3社(Moody’s、S&P、Fitch)に書簡を送って格下げに対して説明をお求めている。(http://www.mof.go.jp/jouhou/kokusai/p140430.htm)

外国格付け会社宛意見書要旨

1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更なる格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
 従って、以下の諸点に関し、貴社の考え方を具体的・定量的に明らかにされたい。
  

(1)日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
 

(2)格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべきである。
 例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。

・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国

・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に消化されている

・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も世界最高
 

(3) 各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように説明されるのか。

・一人当たりのGDPが日本の1/3でかつ大きな経常赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。

・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維持した。

・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済のファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同格付けとなる。

2 以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではないということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめとする各般の構造改革を真摯に遂行している。同時に、格付けについて、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必要としている。

普段は均衡財政、プライマリーバランスの黒字化、消費税増税、シーリングを掲げている財務省による反論である。
しかし、これでなお純債務という表現は避けている。

なぜまず、定性的にも反論し、国際標準である純債務でみるべきだと主張しないのか。実は財務省は金融資産の定義を実にあいまいにしているのである。

2005年の参院予算委員会で当時の谷垣財務大臣は、金融資産を公表してほしいという質問に対し、「年金基金や外貨準備は使い道が決まっていて、簡単には取り崩せない。」「資産と国の債務を相殺するのには無理がある。」と述べている。

現在の総理と最大野党の党首が財務大臣を経験し、国際標準な純債務という概念を持っていないことは大変危険ではないだろうか。