ここがヘンだよ「バジョットさん」その2

ここがヘンだよ「みんなの党」 その2でもパジョット氏はみんなの党を批判している。

残念ながら、どちらの案を実行したところで、「デフレ脱却が確実」とは考えづらい。なぜなせば、目標を達成できない場合の罰則がないためだ。その意味では、意外と日銀思いの改革案なのかもしれない。

しかし、これは事実と異なる。渡辺氏は「総裁解任」規定復活も検討しており、罰則規定がないと批判するのは時期尚早である。

(新日銀法で廃止された)政府による日銀総裁解任条項の復活も議論の対象にすべきだと思う。明らかに日銀は「デフレターゲット」で金融政策を続けてきたからだ。

渡辺喜美みんなの党代表【政権奪取戦略】(下)

批判対象の言動を無視して批判するとはマスメディアとしてあってはならないことである。最低限のマナーを守って書くべきであり、パジョット氏があえて匿名で書いている点はこういった趣旨もあるのだろう。

しかも渡辺氏の発言は同じサイト内であり、いかに情報収集に手を抜いているかがわかる。
この点でもはやこの記事のロジックは成り立たなくなるのだが、他のおかしな点も続けて見てみる。


達成可能な物価目標を外す中央銀行の総裁は、余程無能なので更迭する必要がある。わざと外したのであれば、悪質な行為なので、やはり、即刻クビだ。場合によっては、総裁だけではなく、政策委員会・金融政策決定会合で議決権を持つ副総裁2人、審議委員6人も罷免する必要がある。総裁をクビにしても、残り8人が無能、またはサボタージュするかもしれないからだ。

論理が飛躍しすぎていてよくわからない。仮に総裁が首になって、副総裁が昇格したとして同じ不名誉な道を辿ろうとするだろうか。
また、総裁提案に反対票を投じ続けていても連帯責任なのか?
私が察するに総裁の首を切る事を大きなインパクトとして書きたいと意図があるように見える。


この時、日銀の複数の幹部が「事実上のインフレターゲット」であることを認めた。ところが、日銀の物価見通しによれば、2011年度の消費者物価上昇率はわずか0.1%にとどまっている。つまり、目標に掲げた「1%」のターゲットを早々に諦めているようなものだが、罰則規定がないので、日銀に緩和を強制するのは困難だ。

インサイダーの情報なので真偽は別にして、もし仮にインフレターゲットだとすると白川総裁は
「インフレーションターゲティングは金融政策を運営するときの枠組みの1つであり、英国やカナダ等では定着している。しかし、今回の金融危機を通じて、インフレーションターゲティングという枠組みについても反省機運が今、生まれてきているように思う」(http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=aNdBmX1AaMzM)
と過去に言っていたように消極的であったはずのインフレターゲットを導入したのか。反省機運はどこにいったのだろうか。

金融の専門家ではない政治家先生方がこれを論破するのは不可能に近い。

これは政治家を馬鹿にした発言ではないだろうか。民主党の金子洋一参院議員や自民党山本幸三衆院議員は金融の専門家だろう。
また政治家のブレーンには金融の専門家がいる人も多く、固定観念でしかない。主観で記事を書いているのである。

国会答弁で鍛えられた日銀幹部にとっては「説明」など朝飯前で、罰則とは思わないだろう。むしろ、延々と続く難解な説明に国会議員の方が音を上げるはずだ。

と続けて書いているが、多くの方がみんなの党渡辺喜美代表に白川総裁がやりこまれた質疑を見ただろう。
また、私自身も部会等で答えに窮した日銀幹部を見ている。


「通貨の番人」として育てられ、強い使命感を持った日銀プロパーの正副総裁にはそんなことを強いるのは酷だし、できないだろう。従って、法改正するなら罷免条項を設けて、総裁を更迭。同時に、インフレターゲット派に与する気が無く、「通貨の番人」意識が強い政策委員会メンバーも放逐し、通貨毀損をためらわない人材で固めるのが望ましい。

これは正しい、ぜひ日銀生え抜きの総裁なんてもう御免である。
しかし、「インフレターゲット派に与する気が無く、「通貨の番人」意識が強い政策委員会メンバーも放逐し」というのは、また矛盾している。
先ほどは事実上のインフレターゲットを日銀が導入したのではなかったのか。インフレターゲット派に与しているではないか。

デフレから脱却し、マイルドなインフレに誘導するリフレ政策には通貨毀損が伴うのは当たり前の話である。また、それは日銀法に規定のある物価の安定でもある。


最後におかしな結びを紹介しよう

通貨価値の毀損をためらわない人物をトップに据えるということは、紙切れが文字通りに紙切れになるリスクは覚悟しておかなければならない。計画通りの予定調和な通貨価値の低下を実現するのは難しく、落ちるところまで落ちる可能性も十分にあり得る。

 人が何かを「信じる」か「信じない」かの判断はデジタル的だ。通貨が信用を築くには長い年月を要するが、その信用が徐々に低下するわけではない。消える時は一瞬。

 実は、それが恐いから法改正案に罰則規定を設けなかったのだろうか。意外と、みんなの党もデフレ脱却議連も物価目標の達成には自信がないのかもしれない。

これにはクルーグマンが答えてくれる。

―しかし、その政策については、「ハイパーインフレを生むのではないか」との懸念もあります。日銀も、インフレ・ターゲットの導入には消極的です。イギリスやカナダなどでは採用されているのに、なぜ日本ではインフレ・ターゲット政策への反対が強いと思いますか。


クルーグマン そこには二つの理由があります。まず価格の安定とハイパーインフレとの二者択一しか頭にない人が多いことです。私が仮に中央銀行に対して、アメリカの場合はFRB(米連邦準備制度理事会)ですが、「目標として掲げたインフレ・ターゲットに達していない」と文句を言ったとしましょう。すると人々は「アメリカをハイパーインフレに陥ったアフリカのジンバブエのようにしたいのか」と反論します。

 でも、私の主張する、緩やかなインフレと、ジンバブエハイパーインフレでは、まったく違うはずです。しかし、多くの人々はその区別がつかない。実際に経験したわけでもないのに、ちょっとインフレになれば、彼らはもう滑りやすい坂道を転げ落ちて収拾がつかないことになると思ってしまうわけです。実際にはそうはならないのに、人々は極端に悪いイメージを飛躍的に抱く。

 インフレ・ターゲット政策が支持されない二つ目の理由は、制度上の問題です。私だって、もし自分が日銀やFRBの役人なら、100%成功するかどうか分からないことに責任は持ちたくない。日本やアメリカのように「流動性の罠」に陥った状況下でインフレ・ターゲットを機械的に実行しても、容易にうまく行くものではありません。

 たしかにこれから5年間、3%のインフレ目標を設定すると日銀が宣言したとして、5年後に何も変わらなかったら、それは日銀にとってずいぶん具合の悪いことになるでしょう。

 とはいえ、そんな日銀の困惑など、どん底の日本経済を救うことに比べれば瑣末なことです。
(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/994?page=4)