岩本教授と飯田准教授のやりとり

岩本教授とのやりとりに飯田泰之准教授が参加している。

岩本氏は先日、量的緩和は無害無益で為替に影響を与えないと述べている。
そして続けて昨日、私が示した論文がたまたま話題になった。


岩本氏は

渡辺・藪友論文は「介入によって供給された円資金は恒久的に市場に残ると仮定」して先行研究と対比させるから,要点はコミットメント。 RT @iida_yasuyuki: つ渡辺・藪友(2010,フィナレビ) @iwmtyss 私の「疑問」は,不胎化と非不胎化での効果が違うに対して


量的緩和は無害無益と言いながら、要点はコミットメントというのはよくわからない。
コミットメント次第で量的緩和は無害無益から有害有益になるのだろうか。


ではコミットメントはあったのか。
現段階ではコミットメントはあったと判断すべきである。なぜなら、白川総裁は総裁談話を発表し、介入を支援するとアナウンスした。
また、報道ベースでは17日の日銀当座預金短資会社の予想よりも約2兆円多いことを根拠として非不胎化介入と報じられている。(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17268720100916)


岩本氏もさすがにマーケットは非不胎化介入=金融緩和を織り込んでいることを否定出来ないだろうと思ったのだがそうではないようである。

日々の資金需要で日銀当預は変動しており,そういうコミットメントが現実的なものかは疑問。また現在,非不胎化とともにゼロ金利解除後もそれを維持するコミットメントすべし,を明示的に言っている人は多いようには見えません。


つまり、マーケットはロイターの報道を信じることはなく、コミットメントではない。
金融緩和ではないと市場が織り込んでいるというのだろうか。


しかし、これは客観的に見てかなり苦しい。もし本当にコミットメントが存在しないとするならば、何がコミットメントになるのだろうか。
総裁が談話を発表し、マーケットで事実が裏付けられてもコミットメントがないとしたら、岩本氏は中央銀行に対して信用はないということだろうか。


単純に考えると、彼は過去の自分の発言やスタンスとの整合性を保つためと考えるのが自然である。
量的緩和は無害無益と宣言した以上はあとに引けない状態なのである。
量的緩和は効果が少ないという論文は見たことがあるが、無害無益と表現したものは見たことがない。


FedBOE,ECBの量的緩和をも否定するのものであり、もしこれを覆して無害無益ならばノーベル経済学賞ものだろう。日本初のノーベル経済学賞も近いのかも知れない。


岩本氏の迷走をもっと掘り下げてみよう

@iida_yasuyuki 「それだとまさに「為替介入の名に値する」んではないでしょうか」 介入の為替への影響があればその通りです。それは元の話には書いていない。緩和の助けを借りないと失敗するもののことを書いていました。

ここで緩和というのが何を指すのかわからないが、非不胎化介入=量的緩和を指していると思われる。
しかし、ここでは無害無益であるはずの量的緩和が、「緩和の助けを借りないと失敗する」と表現している。


量的緩和が伴えば介入は成功すると言っているのと同意義である。明らかに矛盾している。



そして飯田泰之教授もこれを的確に指摘している。

効果=円安化ですよね.ということは少なくとも「介入+緩和」は一時的には効いている(2004年にも効いた).ということは岩本先生の主張は「為替介入は関係なく金融緩和だけが為替相場を左右する」というものになる.@iwmtyss

実は岩本先生が「介入は関係なく金融政策だけが為替相場を左右する」と主張するとは思っていなかったのが僕の誤読の始まり.これは主要中銀のBS比較と為替の推移をみても非常にもっともな主張.@iwmtyss

金融緩和を伴わない介入は決意表明程度のものかも知れない.しかし,短期的には多少の効果があることもある(2000以前の介入を見よ).ならば両方やればよいというのが僕の主張.そして期待転換をスムーズに誘導するには為替介入を伴うのは一つのコミュニケーション方法だと思う.

テイラー溝口介入の際はかなり長期的に残ったわけです(恒久かどうかは一生わかりませんが).それと同様の介入+緩和の戦略がある程度有効というのは重要な発見だと思います @iwmtyss 渡辺・藪友論文は「介入によって供給された円資金は恒久的に市場に残ると仮定」


岩本教授から量的緩和は無害無益というお話を拝聴したいものである。