実質実効為替レートと交易条件のデカップリング

「バブルデフレ期の日本の金融政策」 岡田靖氏と浜田宏一教授の論文を参考に実質実効為替レートと交易条件を考えてみる。

注意すべきは,実質為替レートと交易条件に関する理解の混乱である.専門家を含む多くの人が,円高は交易条件の改善と同義であると考えている.いうまでもなく,交易条件の改善は実質所得の上昇を意味する.つまり,両者が同じものであるなら,円高は輸出産業に損失を与えても,内需産業はそれを上回る利益を享受できるので,国民経済全体では利益を受けることができる.だが,交易条件が所与である小国1)であっても実質為替レートは可変的であることを考えれば,両者を同一視することの誤りは明らかである.

(中略)

実質為替レートの上昇は交易条件の改善によって裏打ちされていない場合には,国民経済全体の利益となるとはいえないのである.

(中略)

為替レートの変動を相殺するように金融政策が発動されなければ,大きな実物的コストが発生することになるだろう.

(http://www.esri.go.jp/jp/others/kanko_sbubble/analysis_02_12.pdf)


つまり、実質実効為替レートと交易条件が同じ動きをしていないときには、可変的である実質実効為替レート=金融政策で対処しなければならないということである。


実質実効為替レートは、円高=デフレを反映し、交易条件は輸出価格を輸入価格で割ったものである。


そこで岩田規久男教授の「デフレと円高」を参考に、実質実効為替レートと交易条件、そして交易条件を実質実効為替レートで割った企業収益を再現する。
実質実効為替レートは上に行くほど円高、交易条件は上に行くほど改善、収益指数は上に行くほど収益が増える。



2010年10月から原油価格などの高騰によって交易条件は悪化している。
これはCRB指数からも確認できる。


また10月までは、交易条件はゆるやかに改善しているにも関わらず円高のために企業収益が減少する。


輸出産業は比較優位産業なので、企業収益指数を上げるために今必要な政策は、
実質実効為替レートを引き下げる=円安インフレにする。
原油高が収まれば企業収益は上がる、あるいは、代替エネルギーの開発などが考えられる。


つまり、円高国益ではないのである。