ゼロ金利制約のない世界

日本銀行FRB政策金利であるコールレートが0.1である。これは事実上のゼロ金利であり、下げる余地がなくゼロ金利制約と言われる。また、様々な意見があると思うが適切な政策金利はマイナス4%と推計される。
これは本来はマイナス4%の政策金利が適切であるのに、ゼロ以下に下げられないため約4%もの金融引き締め状態である。

コールレートがゼロ金利制約になると流動性の罠と言われるが実はそうではない。長期金利は10年国債長期金利は1.5%はまだ下げる余地があるのである。ただし、この話は後日として今日はゼロ金利制約のない世界を考えてみる。

そこで"The Great Escape? A Quantitative Evaluation of the Fed’s Non-Standard Policies∗"
Marco Del Negro, Gauti Eggertsson, Andrea Ferrero, Nobuhiro Kiyotaki December 2, 2009
http://www.frbsf.org/economics/conferences/1003/delnegro_eggertsson_ferrero_kiyotaki.pdfを引用してアメリカの例で考える。

まずFRBは信用緩和政策(Credit Easing)と呼ばれる、バランスシートの拡大と非伝統的金融政策として国債以外の資産を買い入れた。



そしてFRBのバランスシート拡大が生産に与える乗数効果は以下の通り推計されている。数字についてはテクニカルな話になるので論文を参照してもらいたい。

*1:清滝=ムーア(2008)のモデルを拡張し、名目賃金と価格の摩擦を取り入れ、短期名目金利のゼロ下限も明示的に組み込んだモデル


非伝統的な政策介入が通常の金融政策の約3〜4倍の乗数効果がある。


そして、リーマンショックと同じショックを与えて、信用緩和政策の有無、ゼロ金利制約有無の4パターンの推計をする。





もしゼロ金利制約がなく、信用緩和政策をとっていれば、名目利子率をゼロ以下に下げることにより、GDPとインフレ率に与える負の影響は少なかったのである。10四半期後には定常状態にほぼ戻っていることになる。

リフレ派も反リフレ派もハイパーインフレになるかならないかという議論よりも、ゼロ金利制約で事実上の金融引き締め状態にある以上、中央銀行のバランスシートの拡大の乗数効果の推計を議論する方が建設的ではないだろうか