静かなるキャピタルフライト?

竹中平蔵氏が5月9日のサンデーフロントライン

日本の財政危機を家計は感じ始めていて外貨資産、外貨運用が増えている。これは静かなる資本逃避、キャピタルフライトと解釈できる

と述べていた。キャピタルフライトとは円からの資本逃避である。


日本銀行の資金循環統計から下の図を作成した。
家計の外貨預金をみると、2003年頃までは右肩上がりで、その後伸び悩んだ後に05年から下落し始め07年に反転している。長期的なトレンドとしては右上がりである。05-06年の下落は量的緩和が解除され、円高ドル安が進行すると予想されたためである。確かに、家計の総資産が減り始めても外貨預金は増加している。



日本国債5年物のCDSと家計の外貨預金を比較する。
07年以降は両者とも長期的なトレンドは右肩上がりであり、竹中平蔵氏の指摘する通り静かなる資本逃避と解釈できる。確かに家計は静かなる資本逃避を始め、外貨預金を売り始めているが家計の総資産に対する外貨預金はわずか0.3%である。もし、日本がギリシャのような財政危機になるとすれば判断するのは市場であり、長期金利が上がり始める時であろう。


またキャピタルフライトは円安を誘導することになる。

サンデーフロントライン武者陵司ドイツ証券アドバイザーは金融危機から共通の立ちあがりのプロセスについて述べている。

金融危機の立ち上がりは共通のプロセスがある。まず財政支出を抑制し、人々の生活水準を切り下げると同時に、通貨を切り下げることによって対外的な競争力を強めて輸出を高める。同時に通貨を切り下げると他の国と比べて相対的に賃金が安くなる。今度は国内で賃金を大幅に引き上げる余裕ができてくる。名目的な経済成長を可能にする条件ができる。そのような形で名目的な経済成長できる可能性が高まると税収が増えて、それが財政収支の原点になるという好循環。(中略)
日本の問題もまさしくそれで日本は金融危機になって、財政危機的な状況になった。ひとつ日本のおかれている違いはそのような局面で円高になったということ。ますます日本の賃金が他の国の賃金に比べて高くなった。高い賃金を他の国に合わせるために、逆に高い賃金を下げなければいけなかった。その結果、正規雇用が減って、非正規雇用の人の収入が減り、ニートなどの社会問題になった。必要なことは円安を誘導することによって日本の賃金上昇の余裕をつくっていくような政策が必要。名目経済成長しないといくら歳出削減しても財政再建は不可能。


日本の財政危機の原因は元を質せば日銀の金融緩和の不足で円高になったことではないだろうか。