良い円高論に対する武者陵司氏の反論

先日の証券アナリスト協会講演より

円高になることによって、日本人の購買力が高まって、日本国の国力の増強に結びつくということで、前川さんからほとんどの人が円高に対応する体制をとった。円高を活用する、円高はいい事だという議論をしてきた。この議論は根本的に間違っている。


例えばグレートブリテンの時、1860-70年代のビクトリア王朝のイギリスはデフレでポンドが強かった。この時にイギリスはポンドが強くて有利だった。強いポンドで何でも買うことができた、世界を支配した。


しかし日本は強い円高による購買力をグローバルに展開できたのか。皇居とカルフォルニア州の土地の値段が同じなった。ひょっとすると日本は円高によってアメリカの州の半分位買い占めることができた。それができればこれはいい円高アメリカの州を半分買えたら日本の経済はもっと発展出来る。


そういうような合理性が為替にはあるはずだが、日本の円に関してはそのような投資の自由がなかった。事実上、日本の膨大な外貨準備はアメリカの短期国債を購入するということに留まっていた。つまり強い円の購買力を使える余地はなかった。そのような環境のもとで、強い通貨が国益であるという議論はあまりにも一般論過ぎて日本固有の事情の説明にはなっていない。しかし、一般の人は円高で海外に行けばブランド物が安く買えるからいいことなんだという程度の認識で円高を歓迎する風潮が強かった。本当は日本にデフレを定着させるという意味で不利な円高をほとんどの人は認識していなかった。

確かに武者陵司氏の指摘する通り、前川レポート、速水日銀総裁と強い円は国益だという理念があったと思われる。
しかし、今回のギリシャ危機ではユーロ下落に対して欧州各国はユーロ下落を容認する発言が各国首脳に相次いでいる。
もちろん通貨安は輸出に有利には働き、貿易黒字国である日本にて良い円高論は景気の悪い時には自分で自分の首を絞めているのである。