Digラジオで非ケインズ効果について

Digラジオで消費税について議論していた。森信茂樹先生と飯田泰之先生が出演していたのでポイントをまとめてみる。

飯田泰之

今のタイミングでの増税は問題。実は増税したら必ず景気が悪くなるわけではない。場合によっては将来の政策に対する財源がつくということなのでプラスの影響があるかもしれない。日本の場合はこの経路でしばしば公共事業で景気が良くなるケインズ政策というが、その逆でしっかりと財源を確保するとかえって景気が良くなると、これを非ケインズ効果という。この非ケインズ効果に基づいて増税しても景気が良くなるという方もいる。

明確に今の日本ではよくならない。増税すると景気が良くなる大きな理由は増税すると財政が立ち直り金利が下がる。金利が下がってそれによって、為替レートは円安になりますし、企業も投資がしやすくなる。でも今の日本では金利が下がる余地があるのか。だから今、増税をして景気が良くなる非ケインズ効果的な状況になるのに、非常に重要な経路である金利が下がる余地がない。


森信茂樹

ケインズ効果は金利を通じての効果ではなくて国民が将来の消費税増税によって安定的な年金制度ができるとか、安心して医療、介護も受けれるような制度ができると、債務の紐を緩めてもいいかなという効果。金利を通じてはケインズも認めている別途の効果。そうではなくて安心効果。老後の安心に備えてこんなに貯蓄が必要ないということで実際にヨーロッパのスウエーデンで起きた。
もう一つは今、消費税増税できる時期ではない。消費税は物価を上げることによって税収を得ていく、物価が消費税分だけ必ず上がる。デフレの時にそれをやるとなかなか物価が上がらない。そうすると消費税が自分の商売のマージンの部分にどんどんめり込んでいく。ますますデフレがひどくなる。消費税が5-10%の値上げしても消費者が買わないから元の値段に戻さざるをえなくなり、消費税は国に払うから自分の利益をその分持ち出して払うようになる。デフレでは、いくらこれを社会保障に使っても景気はよくならない。

飯田泰之
ケインズ効果の元々の点はその通り。できれば非ケインズ効果を後押しする形で財政を再建したいというのが僕の考え方。

森信茂樹
適した環境はやはりまずデフレ脱却していないと、せっかく経済が消費税増税のためにめちゃくちゃになる可能性がある。あと1年くらいかけて制度設計をして2、3年後くらいのデフレを脱却する時期を目指してあげていく戦略が必要。
そのためにも成長戦略で今回出したのだろうけど年が合う形で実行していくことが必要。

飯田泰之
経済がデフレからインフレになる。今後インフレを心配しなくてはいけない時に財政再建をしますと問題である。インフレを押さえることができ、更に財政再建もでき一石二鳥の効果今やってしまうと増税をして景気が悪くなった。それによって税収が落ちて、また増税をした。それによってまた税収が落ちる。

実際にヨーロッパの財政再建でしばしば言われることなんですけども、増税先行での財政再建は成功例が少ない。どちらかというとひとつは経済の立ち直りであるし、もう一つは支出の切りつめから始めると最終的には多少増税するけどもなかなか財政再建がうまくいく。その一方で帳尻を合せのような増税をしていくと、景気が悪くなり、景気が悪くなったから増税する負のスパイラルに落ちる。政策のタイミングが必要。

両者ともこの時期の増税には決起の悪化をもたらすため反対であり、デフレを脱却してからという共通点で一致している。
また、飯田先生はもう一歩踏み込み、増税でインフレと財政再建を同時に達成出来るとしている。これには日銀との意思疎通やアコードが必要かと思う。
飯田先生は今の日本では増税して景気は良くないと小野理論と非ケインズ効果の二つを否定している。

ただし、飯田先生は金利の低下による非ケインズ効果がないというのは長期金利は下がる余地があるのではないか。
もし金利の低下する余地がないとすると、日銀の一層の緩和やコミットメントによる、長期金利の低下や時間軸効果が効かないことを意味して、飯田氏の従来から主張しているリフレ政策と矛盾するのではないだろうか。