失った金利収入は累計331兆円?

かつて枝野幹事長も預金金利を上げろと主張した通り、民主党には金利を上げれば家計の預金が増えて良いことだという考え方があるようだ。一方でかつて08年の10月に大塚耕平氏も朝まで生テレビで日銀のゼロ金利で家計が金利収入を失ったと主張していた。

本当に日銀のゼロ金利政策で家計は金利収入を失ったのだろうか
毎日新聞が同じ趣旨の記事を以前書いていたので引用する


日銀:バブル後の14年を試算 家計の金利収入、331兆円「損失」2007.05.26 東京朝刊 3頁 三面

日銀の福井俊彦総裁は25日の衆院決算行政監視委員会で、バブル経済崩壊後の91〜04年末に家計が得られたかもしれないのに、超低金利のために失った金利収入が累計331兆円に上るとの試算を示した。長期間の景気低迷、デフレ経済から脱却するため続けられた超低金利政策で、負債を抱えた企業の業績回復は進んだが、そのしわ寄せが家計に生じた形だ。

 バブル崩壊直後の91年の1年物定期預金金利は年6%程度で、家計の金利収入は約38兆9000億円だった。しかし、1年物定期預金金利ゼロ金利政策下の04年には年0・03%程度まで下がり、年間の金利収入は4兆7000億円まで落ち込んだ。91年の金利収入が04年末まで続いたと仮定した場合と実際の毎年の金利収入を比べると、その差額は331兆円に達するという。

 日銀は昨年、ゼロ金利政策を解除し、2回利上げした。現在の1年物定期預金金利は0・34%程度まで上昇している。【山本明彦】

毎日新聞社

記事にもある通り、実際に言い出したのでは当時の福井日銀総裁である。
はじめに断っておくと、金利とは何かという概念について新古典派ケインズ派と論争があるのでここでは踏み込まない。


まず、この累計の計算で疑問に感じるところは6%の定期預金金利がついていた6%を元に計算しているところである。
預金金利は日銀の政策金利はもちろん物価上昇率の影響もうける。当時の消費者物価指数(CPI)が3%であれば、実質金利は3%であろうが、現在のように2%のデフレとすると預金金利が0.03%であっても実質金利は2%程度である。


差は1%であり、91年と04年に対し大きな変化があるとは思えない。また6%の預金金利がつく経済が適正なインフレ率かといえば議論があるだろう。


そして、日銀の責任であるという点では正しい。日銀がデフレを脱却出来ないことに根本的な原因がある。
速水総裁時にはデフレにも関わらず「強い円は国益」ということが叫ばれた。


以上の通り、名目では金利収入が失われたという主張は正しいとも思えるが、本来ならば実質金利で考えるべきであり名目では浅はかな議論である。
実質金利として失われたとは言えない。もちろん名目で失われるとデフレと同様、債権者から債務者への所得移転であり日銀が悪いということはできる。