FedのBOJ化?

Fed Watch: Bernanke Post Mortem
Tim Duy looks at the Fed's likely course of action
(http://economistsview.typepad.com/economistsview/2010/07/fed-watch-bernanke-post-mortem.html)

Economist's ViewでFedウォッチャーのTim Duy氏のポストが載っていた。

Ben Bernankeは預金準備への付利をやめてゼロ金利にするとオーバーナイト市場がなくなるとか
David WesselはFedのこれ以上の国債買取はマネタイゼーション長期金利が上昇するとか
Scott Sumnerはやはり、暗黙のインフレターゲットを2から1.5%に下げたとか
まるで日銀とリフレ派の闘いを見ているようであった。

要約したので紹介する。


・Mark Thoma, Paul Krugman, Scott Sumner, and Joe Gagnonらはバーナンキの議会証言の景気悪化や二番底懸念に対する金融政策の姿勢に疑問だと思っている。彼らは金融危機に対する対応は終わり、危機後の新しい貸出が短期的な経済の落ち込みに対して重要だと思っているが、Fedの対応は不明瞭。

・市場参加者は最近のデータから次の新しい金融政策が打ち出されると思っていが、バーナンキの議会証言になく失望した。さらにバーナンキは後半にかけて景気悪化すると思っていないようだった。バーナンキは景気の見通しは異例に不透明(unusually uncertain)と認識しているが、追加の新しい金融政策をとろうとしているようには見えなかった。

バーナンキ議会証言
「金融政策は現在とても効いている。金利はゼロに近く、いくつもの制度が市場を安定させている。長期間低金利を維持すると表明しているし、100兆ドルも証券を買っている。誰もFedが積極的に景気を支えようとしてはいないと思わないだろう。もし景気が躓いたらFedはオプションを見直す必要がある。預金準備の付利はわずか0.25%である。バランスシートを変えることもでき証券を持ち続けることや買い増すこともある。我々が知っておいてもらいたいことは、どんな貸出制度にも明らかに欠点や潜在的コストがある。そして、今の金融政策はすでにとても効いている。」

バーナンキが取るべきオプションは3つある。低金利を維持するとコミットすること。預金準備の付利をカットする。短期金利は既に低いし、これらは大きな効果は期待できない。もっともバーナンキは「預金準備の超過への付利をもしゼロにすると短期金利市場が蒸発し、将来FFレートを上げた時に運営が難しくなる」と言っている。確かにそのコストはあるので3つ目の選択肢はバランスシートを拡大したままにする。2種類あって、3aは証券を持ち続けること。更なる効果というよりは現在の効果を維持する。3bは金利の目標としてさらに証券を購入する。ギャグノンの提案したように、3年国債が25bpになるまで国債や証券を購入する。
・なぜギャグノンの提案をFedは聞き入れないのだろうか。David Wesselは次のように述べている。
「もうモーゲージ国債のスプレッドは大きくない。モーゲージ金利は低いのにまだ住宅部門は死にかけている。モーゲージ金利をあと0.25%下げても住宅部門がどうなるかわからない。
Fedはもう国債を買っていてすでに10年国債の利回りは3%以下で、3年国債金利を下げるために国債を買ったら逆効果になる。もう赤字だらけでこれ以上Fed国債を買うとマネタイゼーションと見なされて金利が下がるどころか、長期金利が上がることになる。
これらは危険で、Fedはもっと資産を買ったところでプラスの効果はないだろう。」
・経済が実際にデフレスパイラルに陥るまでは借金をマネタイゼーションするとして却下される。国債自警団がまた勝った。

・またWesselは奇妙な遠回りをしている
クルーグマンは1998年に日本は流動性の罠に陥ったと書いた。彼は金利がゼロでも経済が停滞したままの時には、もし中央銀行が信認を放棄して無責任になれば、将来のインフレ期待が形成され金融政策は効くといった。
教科書にはインフレ率の調整には金利が重要で、Fed金利をゼロ以下にすればインフレ率が調整できると書いてある。しかし、名目金利はゼロ以下にならないので誰もがインフレになると信じなければインフレにはならない。
実際にはFedはインフレ予想を操作することが難しい。逆効果になるかもしれない。短期金利がゼロで名目長期金利が高くなることはリスクが高い。」

・教科書が間違っているのだろうか。おそらく、別の見方をすれば高い名目金利は賃金を上昇させ、また借金の実質的なコストを軽くして、さらに現在の消費を減らす。

長期金利の上昇から導けることは金融政策は効果があるということである。もし仮に長期金利の上昇のリスクがないとすればあまり効かないということになる。インフレの恐怖や長期金利が上がることを政策担当者が十分に理解して受け入れれば、副作用が表れる。悲しいことにどちらも現在の明らかな問題である。

・Scott Sumner'sはバーナンキの議会証言で暗黙のインフレターゲットを2%近辺から1.5%に下げたとしている。彼はFedディスインフレと闘うことに関心はなく、実は密かに歓迎しており、雇用市場の回復も加速させる意図はないと言っている。もし楽観的なディスインフレで失うものは二つのマンデートである。Fedは本当に重要視しているマンデートは厳密な物価の安定である。