加藤寛による政府紙幣を発行せよ
PHPのVOICE8月号で小泉氏や竹中氏のブレーンとして知られる加藤寛教授が民営化と政府紙幣について述べている。
ここでは分割民営化を提言しているが、財源が足りなくなるではないかという反論に対して
「政府紙幣を発行せよ」と書いている。
白川総裁が「いまデフレではない」などと主張したことを問題外と一蹴している。
またモラトリアム法案を筋が悪く、中小企業の返済が厳しい時は債券を中央銀行が買い取えばいい。
金融機関もリスクがなくなり中小企業から貸し剥がすということがなくなる。
ここでの加藤寛氏の主張を要約すると
・政府紙幣と国債を混同している人がいるが両者は本質的に異なる。国債は利子を付けて発行するが、政府紙幣には利息はないから、利息が上がる心配はない。
・シニョレッジを得られる利点もある。一万円札を発行して紙幣の原価を100円とすれば9900円の政府収入になる。
・インフレになるのが怖いと言うが、インフレ目標をきちんと設定して進めればよい。インフレ率は成長率が2%、物価上昇率が2%で4%程度が適当。それを目標に政府紙幣を発行する。
・政府が決断すればすぐに実現でき日本銀行の金融緩和や霞が関埋蔵金をあてにするよりよほど現実的。
以上が加藤寛の主張であるが、次号でも続くようである。
みんなの党の提案している中央銀行の中小企業債券の買取も加藤寛氏は同じことを言っている。
中央銀行のリスク資産の買取はqualitative easingであり、まっとうな政策である。
また、シニョレッジについて将来返済する必要があるから収入ではないだろうという反論が予想されるが、返済するならば60年後に返済するとすればどうだろう。名目4%で60年後なら100兆円仮に発行したとしても60年後の価値は1.04^60=7.1067で約1/7である。わずか14兆円返済すればよい。金利がないというメリットはそういうことだろう。
もちろん物価上昇率が2%を超えても政府紙幣を発行してシニョレッジを得ないようにインフレ目標を設定すると加藤寛氏も主張しているのである。
スティグリッツが元々は政府紙幣を提唱しており、経済学的にはまっとうな政策である。
Willem Buiter, “Can Central Banks Go Broke?”, CEPR Policy Insight No.24, May 2008にもあるように、シニョレッジもラッファーカーブを描く。(www.cepr.org/pubs/policyinsights/PolicyInsight24.pdf)