BOJfail Index 池尾和人氏の過ち

池尾和人氏が元々はクルーグマン教授のFedfail Index(http://krugman.blogs.nytimes.com/2010/07/21/the-fedfail-index/)を参考に日銀失敗指数なんてものをつくっている。(http://agora-web.jp/archives/1067338.html)


しかし、この池尾和人氏の日銀失敗指数にはまず根本的な欠陥がある。
クルーグマン教授はインフレ率に『core inflation』を用いている。
一方で池尾和人氏はコアインフレ率を用いている。細かい話になるがこの指標は厳密には違う。
クルーグマン教授のいうcore inflationとは、変動の大きい食料とエネルギーを抜いている。
日本のコアインフレ率にはエネルギーが以前含まれていて、日本ではcore inflationはコアコアインフレ率(コアコアCPI)を指す。

そもそも指数の作り方が間違っているのである。

実はこれは小さな差に見えて大きな差である。


まずクルーグマン教授のつくったFedfailを紹介する。

1.3* ABS(unemployment – 5) + 2* ABS(core inflation – 2)という式である。

そして次に池尾和人氏の日銀失敗指数である。

1.3* ABS(unemployment – 4) + 2* ABS(core inflation – 1)
ただし、日銀はデフレから脱却できないので2の前にマイナスをつける必要がある。

これを元に池尾和人氏は

水準そのものを直接比較しても、あまり意味がないと思うが、変化方向には多少の意味があろう。リーマン・ショック以降、日米ともに損失の拡大が起こる。クルーグマン教授は、米国が依然として悪化のピーク近辺にあることを示すために(にもかかわらず、バーナンキ議長には危機感が乏しいと指摘するために)連銀失敗指数の結果を提示したのに対して、日本はまだ高止まりしているとはいえ、悪化のピークからはかなり改善してきているといえる。


しかし、クルーグマン教授に忠実にエネルギーを除いたコアコアCPIで日銀失敗指数を作る。
池尾和人氏と同様にインフレ率1%、失業率4%に設定している。データは同じく総務省統計局から。





高止まりして日銀は失敗したままである。悪化のピークからかなり改善しているだろうか?
また長期的にみると日銀は常に失敗しているように見える。量的緩和の効果がじわじわと時間と共に効いていると解釈することもできる。

00年8月のゼロ金利政策の解除を大失敗であり、指数が飛び跳ねている。
06年の初めの量的緩和解除の憶測と実際に解除した際も数値が上昇している。

こうやって長い期間をみると、結構優れた指標である。テイラールールが元なので当たり前なのかもしれないが…


また看過できない点は現在の失業率は雇用調整助成金で実際の失業率より政策で3%強ほど低くなっている。
つまり、実際には日銀失敗指数は更に大きい。


池尾和人氏は意図してなのか単純に間違えたのかわからないが、クルーグマン教授のFedfailを引用して日銀失敗指数をつくりながらコアCPIにエネルギーが入るかどうかを見落とした過ちはとてつもなく大きい。

真実は日銀はとても大きな失敗して未だ高止まりしている。