円高は交易条件を悪化させる

本日、円高が85円まで進んだ。
一部では原油価格の高騰が交易条件を悪化させている。円高は交易条件を改善するという議論がある。

果たしてそれは本当なのだろうか。


エコノミストの故・岡田靖氏が参考になる記事を遺している。
COLUMN-〔インサイト円高が交易条件悪化を引き起こしている可能性=エコノミスト 岡田氏(http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK008018520080411)
COLUMN-〔インサイト円高イコール交易条件改善は事実でない、輸出産業の受けた被害=エコノミスト 岡田氏
(http://jp.reuters.com/article/economicNews/idJPnTK024560220090210)


ここで論じたいポイントは

われわれに関心があるのは「円安で輸入物価上昇が起こり、日本経済は打撃を受けている」という主張の妥当性である。昨年の夏以来、円の対ドルレートは120円前後から100円まで20%近く上昇した。貿易額でウエートした実効レートでも、10%以上の上昇が起こっている。円安がコスト高を通じて日本経済に打撃を与えているという主張が正しいなら、この円高で輸入物価の下落が生じているはずだ。

 だが、実際に製造業の産出投入価格比を調べてみると、その低下傾向は為替レートの変化と全く関係なく一貫して低下していることが分かる。また、輸出物価の輸入物価に対する比率である交易条件(これはサービス業や家計も含めた日本全体の「産出投入価格比」である)は、06年から07年初めまで比較的安定していたが、円高進行に逆行して急激な低下を引き起こしていることが分かるのである。

 つまり円高が相対的な輸入物価の低下を通じて日本経済のメリットとなるという主張は、少なくとも現象的には全く実現していないということである。むし円高は交易条件の悪化を引き起こしているという方が妥当と言えるのだ。

では、現在までのグラフをつくってみる。

確かにリーマンショック後の3ヶ月のみ、交易条件は一貫して下落するトレンドから外れている。
また実効レートと実際の為替がリーマンショックの時にクロスしている。
そしてリーマンショック後は急激な円高と共に急激に実質輸出が落ちている。

交易条件は実効レートと連動していると言えよう。
つまり、円高では交易条件悪化し交易損失となり、円安では交易条件が改善し交易利得なるといえる。


このようになる理由は、岡田靖氏の指摘する通り輸出産業が比較優位にあるからである。
強い円は国益というのは交易条件をむしろ悪化させている。
円高は一部の輸入業者と旅行者、そして海外留学者を得にするが国民全体で考えると円高は害である。

強すぎる円を管理している主張する人にはよく考えてもらいたい。