2010年上半期の白川総裁の成績表

平成21年12月21日、WBSの白川総裁の発言



―――現在の物価の下落傾向について
消費者物価の前年比が最も大きかったのが今年の8月でマイナス2.4%。最新の10月がマイナス2.2%。今後は昨年の石油高騰の影響が薄れマイナス幅は来年の初めには1%程度になる。問題はその先でマイナス幅は縮小していくとみているが昨年の秋以降の落ち込みが大きかったために日銀として努力はしているが需給バランスの改善が徐々にしか進まない。
その意味では緩やかな物価下落がしばらく続く。2011年度にもごくわずかマイナスが残る。




―――なぜ先進国の中で日本だけが長い間デフレなのか

※ 日米欧の消費者物価
80年代 90~97年 98~09年
日本 2.5 1.5 -0.2
米国 5.6 3.3 2.5
ユーロ圏 5.3 3.0 1.9
総合指数の平均前年比、%

日本の物価上昇率はデフレが言われ始めました1998年以前からバブル期のような未曾有の好況期を含めて海外と比べ2~3%低い状況が続いてきた。
なぜ低いかというとひとつめは内外格差の是正。流通合理化、規制緩和に取り組んだ努力の結果もあって衣料品や食料品中心に幅広い商品の値段が下がってきた。
二つ目の理由は海外と比べて日本は財の値段はそれほど下がっていない。下がっているのはサービス。日本では経営サイドも労働サイドも雇用の確保を最優先して賃金の引き下げるは受け入れるという選択をした。その結果、労働集約的なサービスの値段は下がった。
三つ目の理由は、より基本的な理由だがバブル崩壊後の将来の成長への期待、自信というものが取り戻せない状態が続いた。その結果本格的な需要はなかなか拡大しない。



半年以上たったので以上の白川発言を振り返ってみる。


まず、2010年の1月の物価上昇率から見てみると確かに1%程度にはなっているものの、日銀が物価安定の理解として引用しているはずのコアCPIは0.3%しか改善していない。


またコアコアCPIでは逆に悪化している。
つまり日銀の金融政策は逆にデフレを加速させ金融引き締め状態であることの証拠である。
エネルギー価格の上昇でコアCPIでみるとデフレが縮小したように見えるだけであって、日銀はむしろデフレを悪化させている.



また内外価格差の是正というのは本来は物価安定の安定と直接は関係ない。
むしろ内外価格差が本当に存在し、デフレ圧力になっているならその供給ショックをオフセットするような金融緩和をすべきであり、無能さを露呈させているだけである。
2番目の理由として挙げているサービス価格の低下も同様である。本当にそうなのかは別としてもサービス価格の低下によるデフレならば金融政策としてなぜオフセットしてデフレを脱却しないの謎である。



他の理由としてあげている「基本的な理由だがバブル崩壊後の将来の成長への期待、自信というものが取り戻せない状態」も十数年デフレが続けばそういったことも当然であり日銀の責任だろう。
またBEIで見ても期待インフレ率は依然としてマイナスであり、期待インフレ率を低下させているのもまた日本銀行なのである。


コアコアCPIは悪化しているにも関わらず、原油価格の高騰でデフレ脱却を唱えている中銀総裁ということなのだろうか。
誰がどう考えても落第だろう


【追記】CPIには高校授業料無償化の影響があるという事も考えられますが、ロイターで子玉氏が指摘されているように

明治安田生命・運用企画部・チーフエコノミストの小玉祐一氏も、高校授業料などの制度変更は「基本的には、該当項目だけに影響する効果であり、マクロ的に物価が下がるかどうかは、需給ギャップの動向に大きく依存する」として、制度変更がデフレに直結するわけではないと指摘する。 マクロ経済全体で考えると「例えば、高校授業料の無償化により浮いたお金を他の財・サービスの消費に回せば、そちらの価格が上がる可能性があるほか、可処分所得の増加が個人消費全体を押し上げることによる景気・物価へのプラス効果も考えられる。制度変更による個別の物価の上下と、マクロベースの物価の上下は区別して考える必要がある」(小玉氏)と説明する。

と考えます。
また政府の予算として前年比で予算規模が大きければそれは当然需要となり、需給ギャップを縮小させます。
高校授業料無償化でデフレになるというのはまさに「良いデフレ論」ではないでしょうか。(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14088820100226?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0)