長期金利の低下とマネーサプライ増加の関係

今まで量的緩和時には自己資本制約や不良債権貸し渋り、ゼロ金利制約のためにポートフォリオリバランス効果はほとんど働かず、量的緩和の効果はほとんどなかったと言われてきた。


田中隆之氏の「失われた十五年」と金融政策(日本経済出版社,2008)では量的緩和の効果について否定的であり、

では、なぜ市中銀行はリスクフリーである国債を買わないのだろうか。「貸し渋り」説が正しいにせよ、資金需要不足説が正しいにせよ、市中銀行がネットで国債の買い入れを増やせば、これを売った企業なり家計の預金が増えることにより、やはりマネーサプライは増加するはずだ。

と書いている。


今回のリーマンショックではほとんど邦銀のバランスシートは直接は傷ついていない。
では今回はポートフォリオリバランス効果は働いたのだろうか




長期金利とM3の動きをみるとリーマンショック以降、長期金利の低下に伴ない、マネーサプライも増加していることがわかる。
これはポートフォリオリバランス効果と言えるだろう。

また、確かに06年までの量的緩和政策では効果が小さいとも言える。



つまりここから導ける事は現在の事実上の量的緩和長期金利を低下させ、国債が売られ、売却した企業や家計の収入となりマネーサプライが増えているという現象である。


マネーサプライを増加させデフレから脱却するには更なる長期金利の低下、イールドカーブのフラット化を目指す政策、時間軸効果や長期国債買取の増額は非常に有効な手段である。