藤沢数希氏の「大ウソ」

アゴラで藤沢数希氏が「為替介入で円高を阻止しろと簡単にいうけれど」という記事を書いている。

さて100兆円もアメリカ国債やユーロなんか買って、それらはドル安、ユーロ安で日本円に対して暴落しているのだから、何が起こったかというと、つまり、30兆円ほどぶっ飛ばしてしまったのだ。国民のお金を。30兆円といえば1年分の税収に匹敵するほどの金額だ。日本国政府は為替証拠金取引は投機的だということでFX業者のレバレッジに規制をかけようとしているが、財務省のやるFXトレードは全てが国債の発行、つまり国の借金でやるのでレバレッジは無限大だ。その巨大なFXのポジションで30兆円もやられて、個人投資家レバレッジはけしからんといっているのはなんとも趣深い話だ。ちなみにFXというのはゼロサム・ゲームなので、この30兆円はヘッジファンドなどの利益になったのだけれど。


30兆円というのはまさに含み損であり、損失が確定しているわけではない。逆に平均である99円を超えて円安になれば含み益になる。113円になれば30兆円の含み益である。


ぶっ飛ばしたという表現は適切ではない。またFXと違ってロスカットはないのでいくらでも持ち続けることができるのだが、氏は為替介入とFXを同一と扱っているのもおかしいだろう。


また氏は続けて、

ここまで読んでわかったと思うが、為替介入は(短期)国債で日本円を調達してそれでドルなんかを買うということなので、国が借金して公共事業をするというのと仕組みは実は同じなのだ。つまり為替介入をすると国の借金が増えるのである。あれほど国の借金を批判しているマスコミが、為替介入に関しては何もいわないのはとても不思議だ。

今度は為替介入を公共事業と同じく扱っている。国の借金が増えるというのは既に述べたように含み損を確定させた時のみである。では含み益になったら増税したとでも言うのだろうか?


最後には

それにUSD/JPYは一日に数十兆円、時に100兆円以上も取引される巨大なマーケットだ。そこで日銀が数兆円分ちょろっとドルを買ったところで実際には何も起こらない。ようするに為替介入というのは「気持ちの問題」なのだ。こんなに円高が進めば日本国政府は黙っちゃいないよ、という態度を示してトレーダーを威嚇するのだ。しかし実際に日本国政府ができることは非常に限られているし、みんなそのことを知っているので、トレーダーが本当に威嚇されるかどうかはわからない。

まず為替介入しても何も起こらないと仮定しよう。そうすると為替介入は「通貨切り下げ競争だ」「近隣窮乏化政策だ」「相手国の同意がないと難しい」と言った批判は消え失せる。
何も起こらないことに通貨切り下げも近隣窮乏化政策も相手国の批判もない。


不胎化介入の場合は市場で為替レートが決まっていて為替介入では何も起こらないかもしれない。
しかし、非不胎化介入では金融緩和と同意義ある。


ここでバーナンキ背理法にも似た表現になるが、非不胎化介入で日銀のBSが拡大したにも関わらず何も起こらないと仮定しよう。そうするとシニョレッジをいくらでも増やすことができ、無税国家の誕生である。


非不胎化介入という金融緩和を伴えば、Fedの金融政策が中立と仮定すると円安になるのは当然である。
つまり、非不胎化介入による為替介入は円安誘導の効果がある。


また、自国通貨の切り下げなので、外貨準備が限界となる切り上げとは違い、紙幣をいくらでも印刷すればいいので無制限に無期限にできる。

以上のように藤沢氏の論理は破綻している。おそらく、わかっていてわざと書いているのだろう。
プロフィールには外資系勤務とあるので氏のポジションでは円安になると損をするといった背景がある可能性もある。