日銀の支配力

本日もなぜ日本銀行がデフレから本当に脱却しようとしないのか本を紐解く。
今回は違った本から引用してみる。
田中秀臣氏の「デフレ不況 日本銀行の大罪」(朝日出版社、2010)


政策委員会はイエスマンばかり
・外部から専任される審議委員は、現実には多くが日本銀行から内々に審議委員就任の打診を受け、時には強く説得され、その上で日本銀行から内閣に推挙されている。
・中原伸之氏は、日銀の副総裁であった福井俊彦氏から就任前に勉強会を通じて知り合いとなり、福井氏から直接頼まれた。その後に福井氏から直接「新しい審議委員の四人は全て自分が直接頼んだ人ばかりだ」と伝えた。
・審議委員候補を日銀が決めて説得していくという慣行は現在も変わりない。
・日銀の審議委員になるには、日銀幹部、時期総裁候補のメガネにかなわなければいけない。
・一度審議委員になったメンバーを再任するかも日銀側で決まる。
・たった10日でこれまでも政策の方針を一転させても一人して異義を唱えないほど一枚岩になっている。
・現在の政策委員会では民主主義的に議論することは不可能。


日銀の言論統制
・現在の審議委員の須田美矢子氏は「世論の動向が露骨なまでに日本銀行の政策に影響を与えた。」
という趣旨の発言
・素人である記者の批判によって、金融政策を簡単に変えてしまうなら市場の信頼を得ることは不可能
・日銀の政策やガバナンスがおかしいと批判する声は国内では少ない。
日本銀行の政策については日本銀行内部やその関連研究機関は一切批判することができない。
・経済学者やマスメディアが日本銀行を批判しづらい構造になっている。
・市場、金融機関、傘下の研究機関に対して強い影響力を持っている。
・政策委員会は形骸化している。
・日銀の研究員が「金融緩和のために、日本銀行は長期国債を買い取るべきである」という趣旨の論文を書いたら紙幣を洗浄する課に異動。
・組織の方針に逆らうとこんな厳しい目にあうぞという見せしめに。
日本銀行は「調査統計局」や「金融研究所」を持っていて、博士号を持った人が数多くいるが、奇妙に彼らは日銀の政策を支持する論文ばかりを量産。
日本銀行出身の学者、有名国公私大の金融論やマクロ経済の専門家に対しても、日本銀行の政策を支持するように陰に陽にネゴシエーションしている。


事実上の政策決定機関とは
・伝統的に日銀の金融政策は行内の「企画局(旧日銀法時代の総務局)」のスタッフで実質的に決定されてきた。
・白川総裁は企画局企画課長を経験し、山口副総裁は企画局長を経験。
・組織の一部局である企画局には政治のガバナンスも国民の監視も届かない。
・その政策決定は前例踏襲であり、自らの組織の過去の過ちは組織を挙げて隠蔽。いわゆる「官僚の誤謬」
・組織の批判や歴代総裁を功績を否定するような批判や改革的政策は一切認められない。


政策委員選任という権力
・マスメディアにも「審議委員就任」という餌を差し出される。
・98年には日銀法改正後、最初の副総裁として時事通信の記者だった藤原作弥氏が選任が発端。
・メディア界における本音の評価は「新聞対策」
・長期国債受け入れの内容を書くと新聞に掲載拒否に。



これに付け加えるとすれば、私自身の経験からだが、政治家への日銀のレクだろう。
日本銀行の担当者は議員会館や個人事務所へレクと称して日銀の広報をする。


残念なことにたいていの政治家は(これは官僚に対しても同じだが)勉強不足なために、理論に染まってしまう。
そして、日銀の代弁者となってしまうのである。また日銀は恩を売るような事もする。


ただし、もちろん山本幸三議員などもいるので、部会等で日銀は吊し上げにあうことも度々ある。
国会答弁等でも似たようなこともあるが、田中先生ご指摘のとおりマスメディアが日銀にコントロールされているのでニュースとして流れることはなく、国民の目には触れづらいのである。