白川総裁お辞めなさい

9日の参院の閉会中審査で白川総裁の発言が話題になっている。(http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920018&sid=aK0CSmyfHDO8


日銀の政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標は現在0.1%。民主党の大久保勉氏は、円高を阻止するために、金融機関が資金を保有する日銀の当座預金に手数料を課すことで、マイナスの金利を実現できないかと質問した。
  白川総裁は「もし日銀の当座預金にマイナスの金利(手数料)を課すと、マイナスの金利になるものを保有するインセンティブ(動機)がないので、金融機関は当然、銀行券を保有する。この点は、金融機関の当座預金に対してマイナスの金利を付けても同じだ」と指摘。その上で「銀行からすれば、銀行券という手段がある以上、翌日物金利をマイナスにしていくのはなかなか難しい」と述べた。

銀行券を保有することとなると、日銀が内規で決定した根拠のないルールである『銀行券ルール』の上限が増えることになる。
それは、日銀が長期国債の買切りが増額することを意味する。現在の追加の緩和策として上がっているのが国債買切り額の増額である。
銀行券ルールを理由に国債買切りの上限いっぱいで買えないというならば上限を増やすべく、超過準備をマイナス金利にするべきだろう。白川総裁自身がマイナス金利は銀行券の発行を増やすと明言しているならばそんな心強いことはない。


次の質問として

日銀は現在、月1.8兆円ペースの長期国債買い入れを行っている。日銀は長期国債保有額が日銀券発行残高を上回らないようにする銀行券ルールを定めている。同ルールを撤廃して買い入れを増やし、長期金利を引き下げて景気を刺激すべきではないかとの質問に対し、白川総裁は「買いオペが財政ファイナンスの容易化、あるいは長期金利の人為的な誘導と受け止められると、逆効果になる」と述べた。

         すぐに激変するわけではないが

  さらに、「日本の財政状態が悪いことは周知の事実であり、長期金利が低位安定しているのは、日本国民が財政再建に取り組む姿勢や、中央銀行が物価安定の下での自律的回復に向けて努力していることに対する信頼があるためであり、そうした姿勢に疑念が生じると、長期金利が上昇し、経済に悪影響が及ぶ可能性がある」と語った。

  銀行券ルールを撤廃した場合の影響について「(長期国債保有額が)銀行券の残高に到達したその日から世の中が激変するという性格のものではないが、一国の通貨の信認を与る中央銀行がどういう原理原則で行動しているのかについて、ある日疑念が生じると、その段階で多分変化が起こるのだろう」と述べた。

まず、日本の財政状態は悪いのだろうか?周知の事実なのだろうか。
今まで再三にわたって高橋洋一氏が述べているが、日本の政府にはばくだいな資産がある。
外貨準備や年金基金などの金融資産も含めれば、純債務の対GDP比は70%程度である。
これは若田部昌澄先生の「日銀デフレ不況」でも同じ数字である。

池尾和人氏も

日本銀行は、国の連結対象子会社のようなもので、その利益は基本的に国庫に納入されます。非伝統的な金融政策の効果を考える際も、日銀のB/Sを単独でみるのではなく、政府と連結してみないといけない。

(http://twitter.com/kazikeo/status/23920772448)

と述べており、白川総裁は政府のB/Sだけを見ていないだろうか。


また、長期金利が低位安定しているのは名目金利の話であり、実質金利は約2%と米国よりも高い。実質金利が高ければ設備投資が増えないのは当然である。
白川総裁もフィッシャー方程式をよくご存知のはずである。


また、仮に長期金利が上がったとても先日約1兆ドルの外貨準備があり、プットオプションになることを述べた。
しかも外貨準備は円高及びデフレ下で増えているのである。外貨準備=ドルが増え続ければ、眠ったドルが市場に出回らずドル安円高になるのは当然でもである。
つまり、高い円でアメリカの物を買えばいいじゃないかという議論があるが、外貨準備として眠っているために米国債しか買えないのである。


また白川総裁は

ゼロ金利政策については「金利が決定的にゼロになると、誰も市場に資金を出さなくなる。そうすると銀行間の資金取引ができなくなり、銀行がいざというときに資金を調達するその場自体が機能しなくなってくる。かえって経済全体の安定性が阻害される。これが一番大きな副作用だ」と述べ、あらためて否定的な見解を示した。

  白川総裁はさらに、先月末に開かれた、米ワイオミング州ジャクソンホールのコンファレンスでは、「バーナンキ米連邦準備制度理事会FRB)議長がこの点について随分時間を割いて、副作用があると言っていた。今では日銀だけでなく、そういう認識はFRBも含めて共有されている」と述べた。


短資会社へ日銀OBを天下らせるのもやめたらいいのではないか。もし、日銀の言うとおりに本当に短期金融市場の機能が低下するためにゼロ金利政策を取らないならば、痛くもない腹を探られるようなことをやめるべきでる。
逆に言えば火のないところに煙は立たない。
もっともゼロ金利だろうと0.1%であろうと銀行券ルールを止めて代替手段としてインフレターゲットを導入し、0.1%を維持する代替手段として大規模な量的緩和政策や信用緩和政策によってデフレにならなければ良いだけの話である。


そして短期金融市場の機能を維持することによって、デフレから脱却できず労働市場を筆頭に他の市場の機能低下させていることには何の問題もないと考えているのだろうか。


日銀が2001年から06年まで行った量的緩和政策についても「多くの研究がなされているが、資金供給量の拡大は金融システムの安定には貢献したが、景気や物価の刺激効果は限定的だったというのが大方の見方だ」と述べ、再び導入することに慎重な見方を示した。

大脱走論文を見れば、効果は明らかである。もし物価に刺激効果が限定的であるならば、いくらでもシニョレッジを得られるよく言われるとおりである。
しかも、こないだ白川総裁は「広義の量的緩和政策」と言っていなかったか。

もし、マネタイゼーション懸念というならば、あと少なくとも30〜40兆円の成長基盤に対する新型貸し出し制度でも構わないだろう。


そして極めつきは

国債引き受けについては「現在、先進国ではもとより、世界の多くの中央銀行による国債引き受けは禁止されている。そういう中で日銀が国債引き受けを行うことは、世界の多くの国が採用している基本的なルールを踏み外すというメッセージを送ることになる」と述べた。

  さらに、「最初は国債を引き受けても問題がないように見えるかもしれないが、多くの経験を見てみても、最初はそうであっても、どこかで歯止めがかからなくなる。これが人間の社会の現実だ」と指摘。

  その上で「その弱さを自覚するがゆえに、あらかじめ引き受けを禁止するというルールを作っており、これが人類の英知だ」と語った


そもそも国債発行残高の約8%を保有し引き受けていながら、人類の英知というのだろうか。(http://www.boj.or.jp/type/stat/boj_stat/mei/mei1008.htm)
(http://www.gci-klug.jp/mitsuhashi/2010/02/18/008441.php)

おそらく銀行券ルールをきちんと説明できないから、しどろもどろの答弁として人類の英知という言葉出てきたのだろう。

財政法第五条こそ人類の英知である。

第五条  すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。

16年間でデフレであり今の時期は特別であろう。高橋是清に学ぶべきである。




最後に白川総裁の発言を引用する

当局が為替相場を自在にコントロールできないことも理解してほしい

(http://mainichi.jp/select/biz/news/20100908ddm008020002000c.html)

固定相場制の国は自在にコントロールしているのである。
やはり国際金融のトリレンマから独立した金融政策を放棄するべき時ではないだろうか。


白川総裁は日銀理論から金融政策を転換できないなら一刻も早く辞表を提出願いたい