政府債務は返済の必要があるのか

土居丈朗教授はアゴラにて

だから、政府債務は返済しなくて良い、という見方や態度は禁物

(http://agora-web.jp/archives/1108959.html)
と書いているが、その前段の論理があまりにも飛躍していないだろうか。


そもそも、政府債務は返済しなくて良い、という見方がある。しかし、それは絵空事の発想である。それは、貸し手側の気持ちになって考えればよい。「一度借りたお金は、借換えを重ねることで返済しなくて良い」と考え、放漫なお金の使い方をしている借り手に対して、お金を貸す気になるだろうか。プロでありビジネスとして政府にお金を貸す金融機関や投資家なら、そんなアマチュアな考え方で臨む借り手には、容赦はしない。貸し手が、自らの都合でいつ何時返済を迫るか分からない。そのときでも、いざとなれば返せるだけの資力があることを証明して見せてこそ、貸し手はお金を貸してくれるものである。


土居丈朗氏は以前から、債務の返済に資産を利用することができないと散々述べているので、粗債務で見るべきだと主張し続けている。


ところが土居氏が上記で認めるように「いざとなれば返せるだけの資力がある」というのはまさにバランスシートの左側の資産ではないだろうか。
つまり、純債務で見るべきである。


例えば、日本銀行は日銀券の発根残高は負債として計上しているが、全て返済する必要があると思っている人もいないだろう。


国の債務は粗債務でみるべきと一貫して主張し続けている土居氏から「いざとなれば返せるだけの資力」という言葉が出てくるとは思っていなかった。


いざとなれば返せるだけの資力として国には資産に加えてシニョレッジと徴税権があることは言うまでもないだろう。