岩本康志教授の『バーナンキの背理法』批判

岩本康志教授は『バーナンキ背理法』を違法な極論と批判している。

バーナンキ背理法のもう一つの使い方は,「何をやってもインフレは起きない」という極論を論破するものらしい。こちらの極論はまともな金融政策の議論には何も関係ないので,政策の議論に資するものは何もない。意義があるとしたら,そのように思いこんでいる一般の人を啓蒙することだろう。
「何をやっても効果がない」に対して「違法な手段をとれば効果がある」という論争なら,論理的には前者は誤りで後者は正しい。
 だが,金融政策の知識がなく「何をやっても効果がない」と思いこんでいる人も,普通の社会常識の持ち主なら「日銀が違法な手段をとる」ことは「何をやっても」のなかには含めていないだろう。そういう人たちの蒙を啓くには,まともな金融政策の議論の方向に導くことだ。つまり,法的に日銀に何ができるのか,何に効果があって何に効果がないか,をきちんと説明することだ。
 どの手段が合法か違法かを知らない人に,違法な手段であることを伏せて「効果がある」と説得するとすれば,それは役に立たないだけでなく,有害ですらある。

岩本康志教授の論点は違法であるかないかである。
日本銀行の業務内容は日本銀行法に定められている。


前提として岩本氏は株式の購入や「お札を刷って給付金で国民に配る」方法を法的に許されない手段と規定し、それらの手段は効果があるとしている。


では、日銀法の条文を見てみる。

第2条  日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。

第33条  日本銀行は、第1条の目的を達成するため、次に掲げる業務を行うことができる。
一   商業手形その他の手形の割引
二   手形、国債その他の有価証券又は電子記録債権を担保とする貸付け
三   商業手形その他の手形(日本銀行の振出しに係るものを含む。)、国債その他の債券又は電子記録債権の売買
四   金銭を担保とする国債その他の債券の貸借
五   預り金
六   内国為替取引
七   有価証券その他の財産権に係る証券又は証書の保護預り
八   地金銀の売買その他前各号の業務に付随する業務
2   前項第5号の「預り金」とは、預金契約に基づいて行う預金の受入れをいう。


第43条  日本銀行は、この法律の規定により日本銀行の業務とされた業務以外の業務を行ってはならない。ただし、この法律に規定する日本銀行の目的達成上必要がある場合において、財務大臣及び内閣総理大臣の認可を受けたときは、この限りでない。


日銀は物価の安定を目的としている。
過去16年間デフレであること自体が日銀法違法な状態ではないのか。


また、過去にも株価のPKOの際には日銀法43条を根拠として日銀は株式を購入しており違法な政策でも手段でもない。