続々・岩本康志氏による「日本銀行のトリレンマ」

コメントありがとうございます。
改めてお答えしたいと思います。

1)
 債務超過と単年度赤字は違いますね。
 日銀は債務超過を避ける行動をとっていることを反証するには,「日銀はよく債務超過になる」という証拠を出すべきでしょう。
 また,昨日のブログで出されたサマーズ氏の発言の契機は日銀が債務超過を懸念したことですが,これは債務超過を避ける行為です。日銀が債務超過を避ける行動をとっていることを反証すると,私諸共ご自身のブログも反証することになります。

もちろん違います。ただし、過去に赤字になった例はあり、この年は国庫納付金がゼロということです。ところがその年に国庫納付金がゼロということが問題になったでしょうか。赤字になれば、当然債務超過になる危険性は出てきますよね。日本銀行の目的は国庫納付金を国に収めることではなく、物価の安定です。

また、岩本さんの仰る『中央銀行債務超過は、「経済学的に冷静に考えると,じつは深刻な問題でもない」』に同意しております。

なぜ私が反証が必要で、「日銀はよく債務超過になる」という証拠を出すべきなのでしょう。ロジックがあまりにも飛躍しており、よくわかりません。日銀は債務超過を避ける行動を取っているという証左をお願いします。

岩本さんは過去に

前提の違いを踏まえてまとめるなら,物価抑制と債務超過の二者択一を迫られるかもしれない,となるでしょう。
http://twitter.com/iwmtyss/status/15210057969
http://togetter.com/li/27631

と述べていますね。
二者択一に迫られたときに、経済学的に深刻な問題でない債務超過の方を避けるというのは、矛盾しませんか?
物価抑制より、債務超過の回避を優先するというのは、日銀法のどこから導けるのでしょう

2)
 私の発言「独立行政法人特殊法人等は債務超過に至る運営をすることは想定されていません」から,わざわざ「絶対に赤字になってはいけない」とか「リスクをとることは許されない」とかは導かれないでしょう。
 どこの独立行政法人特殊法人等も,最初から債務超過になる前提で経営されてません。結果として債務超過になれば問題視されます

「絶対に赤字になってはいけない」とか「リスクをとることは許されない」とかは導かれないならば、なぜ憲法違反なのでしょう。
金利が正常化している時にも、リスク資産であり、損失をもたらし債務超過につながる可能性がある、
長期国債は銀行券ルールのもとでも購入しています。なぜこれを買い増すことが憲法違反なのでしょうか。
具体的にいくら?あるいは、どの水準を超えると憲法違反になるのでしょうか。

3)
 独立行政法人特殊法人等の一般的枠組みを出しているのだから,総務省に思いを馳せてもらいたかったのですが(総務省設置法4条13,14,15)。

この点は、通りすがりさんからのコメントもありますが、認可法人ですし、大きな争点とも思えないのでいいでしょう。

4)
昨日のブログで,
「岩本康志氏は(中略)物価の安定よりも日銀のバランスシートが毀損する恐れの方を優先しろということである」
と書いておられたので,私の方からは,
「私のブログの結論は,長めの国債を大量に買うよりは時間軸政策の方が良い,ということ」
と訂正してます。
A(デフレ脱却,物価の安定),B(長めの国債を買う),C(時間軸政策)として,
「「Aの目的にはBよりCが良い」と発言したら,「Aの目的にはB」と思っている人から「お前はAを否定している」と絡まれているというパターンですね。」
ということですよ


「A(デフレ脱却,物価の安定)の目的にはB(長めの国債を買う)よりC(時間軸政策)が良い」
という発言ですが、
岩本さんは、週刊東洋経済臨時増刊号「デフレ完全解明」のP54にて

伝統的金融政策の余地がなくなり、日本銀行は長めの金利に働きかける「時間軸政策」を再び採用した。さらに、「包括緩和」として、リスク資産購入にまで踏み込んだ。しかし、時間軸政策までが、金融政策として中央銀行が行える精一杯の範囲。これ以上の景気刺激が必要な場合は、政府が財政政策を行うべきだ。財政政策に関しては、効果についてもリスクについても、われわれは経験を積んでいる。また、国会で意思決定を行うので、財政民主主義にかなう。リスク資産の購入は効果が不確かなうえに、中央銀行という独立した機関が、国民負担が発生するかもしれない決定を行うことは、厳密に考えれば、憲法に抵触する。

Bの長めの国債というリスク資産を買うというのは岩本さんが仰るように、債務超過に陥る可能性の政策です。

BよりCが良いではなく、岩本さんの解釈ではBは中央銀行の政策の範囲ではなく、憲法違反の政策で、これを否定しないことはおかしいですよね。