岩本康志氏の1995年でVが一定は事実か

岩本康志氏はブログにて

Vが一定であると考えるのが貨幣数量説である。すると,貨幣と名目所得は比例関係にある。実質経済成長を考えなければ,貨幣の増加は長期的に実体経済には影響を与えないならば,物価を上昇させることが言える。実質経済成長があれば,それに見合う貨幣の成長は物価を安定的に保つと言える。Vは金利によって変化するが,長期的には安定していると考えられ,長期的には貨幣量が物価を決定するとマクロ経済学の教科書には書かれている。

(1995年以前の貨幣の流通速度をもとにしているので,着地すべき名目GDPにはある程度の幅をもってみる必要はあるが,以下の議論に本質的な影響はない)

と書き

貨幣数量説と流動性の罠という,昔からマクロ経済学の教科書に書いていることが日本で現実に起こっていることを確認すれば,国債の日銀引き受けがデフレ脱却に何の意義もないことはすぐわかることである。そして,それは財政規律の喪失という弊害をもたらす。このことは震災の前でも後でも変わらない(注2)。

と結んでいる。


ただ、岩本康志のVが一定であるという仮定と、長期的にVが安定しているのは事実だろうか


名目GDPをM2で割り、貨幣の流通速度を計算する。1999年以降はデータの都合上M2+CDを利用する。データの出所は日銀と内閣府である。


バブル以前の1985年から計測しても貨幣の流通速度は右肩下がりのトレンドとなっている。
岩本氏の前提は事実とは異なる。
つまり、岩本氏の「国債の日銀引き受けがデフレ脱却に何の意義もない」というのは、事実の誤認に基づく結論であり何の説得力もないだろう。


【追記】岩本康志先生からコメント欄に貨幣数量説にはマネタリーベースを使用していると指摘を受けてマネタリーベースの流通速度を作成しました。
岩本康志先生のご指摘はごもっともですが、結論は変わらない結果となっています。


【追記2】1970年からにアップデートしました。
85-10年の25年間は岩本先生の認識では「長期」に該当しないということでよろしいでしょうか?
また、過去に遡るほどVが長期的に安定しているとは間違いだとわかりますね。
影響力の東大の教授が事実の誤認に基づいて日銀引受を行ってはならないと仰るのはいかがなものでしょうか。