2010-01-01から1年間の記事一覧

池尾和人氏のガバナンス論

池尾和人氏はアゴラで次のような奇妙なガバナンス論を述べている。 (http://agora-web.jp/archives/1116486.html) ふつう、子会社のトップ(中銀総裁)がグループ企業全体に影響を与えるような意思決定を勝手にやっていいはずはない。グループ企業全体に影響…

経済産業省による法人税5%引き下げの効果

税制調査会における経済産業省の主張を参考資料を基に紐解いていく。 1. 我が国で法人税率を5%引き下げた場合の効果試算 (法人税率を引き下げなかった場合との比較) ① 最大121万人(製造業で69万人)の雇用維持効果 ② GDP押し上げ効果として、国…

潜在成長率の低下は実際にデフレをもたらしているのか

白川総裁は人口デフレによる潜在成長率がデフレの根本的な原因とし、岩本康志教授なども潜在成長率の低下はデフレ圧力となると述べている。 以前紹介させていただいた、飯田泰之准教授の結果では労働生産人口の動態と平均インフレ率は関係がなかった。 (http…

続・白川総裁の人口デフレ論

先日、白川総裁の人口デフレ論を紹介したが講演でもこの点について詳しく述べている。 1990 年代以降の日本を振り返りますと、経済成長率が趨勢的に低下しているうえ、労働力人口は1998 年をピークに、総人口は2005 年以降、減少に転じています。この人口動…

財務省VS経済産業省

日本経済新聞が財務省と経済産業省の税収の弾性値の違いについて取り上げている。 対立の構図は、成長を巡る財務省と経済産業省の考え方の溝を映している。名目成長率が1%上がった場合に税収がどれだけ増えるかを示す税収弾性値。経産省によると、過去の景…

中央銀行の財政政策の認可

日本銀行による財政政策は、国会の議決を経ずに国民負担となる可能性があるないし、本来の政治の役割を日銀に押し付けていると批判する人達がいる。(例えば岩本康志 東京大学大学院経済学研究科教授 日銀は「財政政策」に踏み込むななど) 先日、日本銀行は…

韓国のCPIから見る国際金融のトリレンマ

韓国は10月の前年同月比でCPI上昇率が4.1%と高い水準になり、インフレターゲット3%+-1%超え利上げ観測となっている。 インフレ率は高くなったのは、固定相場制に近い意味を持つ、自国通貨売り介入をしたために独立した金融政策を半ば放棄していたためだろう…

失敗の責任をとらない組織

先日、日本銀行は展望レポートを発表した。 今回の注目点は、政策委員の物価見通しを外したことである。 7月時点との差は以下の通りである。(http://www.boj.or.jp/type/release/teiki/tenbo/gor1010a.pdf) 日銀は事実上、デフレ脱却時期を先送りした事にな…

岩本康志教授の『バーナンキの背理法』批判

岩本康志教授は『バーナンキの背理法』を違法な極論と批判している。 バーナンキの背理法のもう一つの使い方は,「何をやってもインフレは起きない」という極論を論破するものらしい。こちらの極論はまともな金融政策の議論には何も関係ないので,政策の議論…

白川総裁の人口デフレ論

金子洋一参院議員が参議院財政金融委員会で白川総裁に対して質問に立った。 そこで白川総裁は人口デフレ論を展開している。 ○参考人(白川方明君) お答えいたします。 現在、日本経済が直面している問題、様々な問題に直面しておりますけれども、一つは物価…

元財務官榊原英資の市場の否定

榊原英資は新報道2001のVTRで以下のように述べている。 介入は失敗。中途半端な介入はすべきでない。成功するための条件がいくつかある。一つは円・ドルで介入するなら日米の協調が出来ていること。そういう条件が出来ていないといけない。 どうも政治家がし…

世界通貨安戦争に参戦せよ

G20財務相・中央銀行総裁会議では世界通貨安競争について議論されている。 さすがに、経済学者で通貨安競争が悪いことだと述べている記事はまだ見ていないが(見ていないだけかもしれない)メディアは、通貨安競争や戦争と煽っている。 なぜ通貨安競争は悪い…

政府債務は返済の必要があるのか

土居丈朗教授はアゴラにて だから、政府債務は返済しなくて良い、という見方や態度は禁物 (http://agora-web.jp/archives/1108959.html) と書いているが、その前段の論理があまりにも飛躍していないだろうか。 そもそも、政府債務は返済しなくて良い、という…

実質ゼロ金利?

日本銀行は5日に実質ゼロ金利政策を発表した。 しかし、これは本当に実質的にゼロ金利政策なのか? Fedを真似たものと思われるが、そもそも日本銀行はゼロ金利は短期金融市場の機能低下を招くと説明していたのだが、今回の措置はどう説明するのか。 そして、…

藻谷浩介氏の正体

VOICE11月号では、「デフレの正体」の著者である藻谷浩介氏が反マクロ本と批判されていることに弁明している。 私は、「いま起きているのは、クルマや家電、住宅など、主として現役世代にしか消費されない商品の、生産年齢人口=消費者の頭数の減少に伴う値…

岩本康志教授のリスク資産とは何か

日銀の5日の金融政策の変更について、量的緩和は効果がないというと主張しつつ、これ以上の緩和はハイパーインフレにつながると唱える人たちは、twitterを中心にどう反応するか注目していたのだが、筆頭でである池尾和人氏や池田信夫氏はコメントしていない…

サマーズ元財務省長官「So what?」

デキビジでは勝間和代氏と竹中平蔵氏が対談していた。 そこで竹中氏が日銀の幹部とサマーズ財務長官との朝食での会話を披露している。 サマーズ財務長官が辞めた後、私が経済財政担当大臣だった時に日本に来て、日銀の幹部のかと三人で朝食をしたことがある…

デフレ脱却は「隗より始めよ」の疑問

28日の大機小機には文鳥氏が書いている。 氏の議論をまとめると ・円高やデフレは日銀のせいであるという批判がある。 ・白川総裁は根源的な問題は「潜在成長率の低下」にあるとしていて、デフレ脱却には民間と政府が潜在成長率を上げる必要があると説明して…

飯田泰之准教授による「人口減少」責任論の誤謬

飯田泰之准教授はVOICE10月号で人口減少による経済停滞論に苦言を呈している。 人口減少論の筋が悪いのは すでに始まってしまった人口減少を、ここ数十年で反転させることはできない。誰の成せいかさえはっきりしないため、積極的な反論を受けにくい点、くせ…

貨幣数量理論から人口デフレ論

人口減少、または労働生産人口の減少からデフレになるという議論がある。 これが本当に正しいのか貨幣数量理論から考える。 貨幣数量理論はMV=PYである。 MVが一定だとすると、人口減少は右辺のYに下押し圧力がかかるだろう。 そうするとPは上昇して、インフ…

リフレ政策と構造改革

構造改革(ここでは規制緩和や民営化など供給サイドを改革し、潜在成長率を引き上げる政策とする)を行うと、デフレ圧力が大きくなる、失業率が増えるなどと主張する人がいる。 果たしてそれは真実だろうか。 高橋洋一氏は次のように述べている。 g.構造改革…

量的緩和と正の潜在成長率

朝まで生テレビで高橋洋一氏が中央銀行による国債の買取は無利子国債と同じだと言っていた。 そこで量的緩和の効果を考えてみる。 日本銀行が展望レポートで推定した潜在成長率は0%半ばなので正である。 つまり、経済成長を前提とした経済である。 量的緩…

超過準備の付利をやめるのは、やらないよりやった方がまし。

サムナー教授のブログでは、 Fedに対する提案を三つしている。 (http://www.themoneyillusion.com/?p=6761#Message-complete) 1. A bigger supply of base money2. Less demand for base money3. A commitment for greater monetary stimulus in the future …

Fedと日銀のマンデート

中川秀直氏のブログでも取り上げているが、21日のFOMCの声明では「mandate」という言葉が三度登場する。(http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100921a.htm) The Committee will continue to monitor the economic outlook and fina…

非不胎化介入と市場の予想

JBpressにバジョット氏が終点の見えない「量的緩和」時代の幕開け効果無き「非不胎化」を政治的に受け入れた日銀という記事を書いている。 その中で「非不胎化」に円高阻止の力はないと書いている。 非不胎化」に円高阻止の力はない円高は阻止できるのか? …

岩本教授と飯田准教授のやりとり

岩本教授とのやりとりに飯田泰之准教授が参加している。岩本氏は先日、量的緩和は無害無益で為替に影響を与えないと述べている。 そして続けて昨日、私が示した論文がたまたま話題になった。 岩本氏は 渡辺・藪友論文は「介入によって供給された円資金は恒久…

岩本康志教授の無税国家誕生

岩本康志教授の一連のtweetは 日銀と私は立場が違います。私は学者の意見を表明するので,無益無害のこと(単純な量的緩和)はしなくてもいい,と言っています。日銀は,量的緩和が有効という意見があることも踏まえて政策を実行しなければいけない。結果的…

ソロスチャートから逆算する

ソロスチャートから逆算すれば、理論的には1$=90円に誘導するにはいくら日銀のマネタリーベースの拡大が必要かなど計算してみる。 ヒストリカルに85円のデータをみると日米のMBの比率が約0.5の時である。 細かい数字には議論の余地があるとして、簡単に…

白川総裁による「非不胎化」と「不胎化」議論

白川総裁は自著の現代の金融政策で第14章に為替介入について書いている。 「不胎化介入」と「非不胎化介入」の差は自国通貨の資金(中央銀行当座預金)の増減だけであるので、上記の議論は、結局、金融政策の変化は為替レートに影響するという議論と同じことに…

介入の弾

民主党政権の初の予算案は実は周到に介入の準備をしていた。 今年の3月にreuterが報じている。 2日に衆院を通過した予算案によると、円売り介入の原資となる外国為替資金特別会計の借入限度額は145兆円と、前年度の140兆円から5兆円の引き上げとな…